ネコは保護される数も殺処分される数も、イヌに比べてまだまだ多いです。保護猫活動の1つにTNRがありますが、“意味がない”という厳しい意見もあります。
そもそも、TNRとはなんなのでしょうか?またどうして意味がないという意見があるのでしょうか?詳しく解説します。
- TNRって何なの?なんの略称?
- TNR活動は意味がないと言われる理由
TNRとは?
そもそもTNRの意味を知っていますか?
捕獲する
不妊・去勢手術をする
元の場所へ戻す
という地域猫活動の基本です。地域猫活動の目的はヒトとネコが共生することを意味します。地域猫は特定の飼い主が存在せず、地域住民で面倒を見ています。なので、ヒトと共生するためには地域にいるネコの管理が重要になります。
ネコは繁殖能力が非常に高く、生後半年から子供を産むことができます。年2〜3回出産し、1回に4〜5匹と言われています。ねずみ算式で1匹のメス猫から始まり、1年後には50〜70匹に増える可能性があります。
なので、以前まではネコの数を減らす=殺処分となっていました。しかし、動物の殺処分は社会問題となっており課題解決のためにさまざまな取り組みがされています。そのおかげで以前より殺処分数は軽減傾向です。
「野良猫は増やしたくない、だけど殺処分もしたくない」という考え方の両立をしています。
TNR活動を通して自然と野良猫の数を減らし、将来的には野良猫をなくすことが最終的な目的です。
サクラ猫?
不妊去勢手術を行った目印として耳先をカットします。カットした耳先が桜の花びらのように見えることからサクラ猫と呼ばれています。
手術をした目印があれば、無駄な捕獲が減りますよね?
カットする耳の違い?
サクラ猫の耳のカットには、どちらの耳をカットするかで意味が変わることを知っていますか?実はどちらの耳がカットされているかで、性別がわかります。
オス猫はみぎ耳、メス猫はひだり耳でカットされています。
元々いた地域に戻す理由は?
TNR活動の(Return)元の場所に戻す理由がわからないという意見を耳にします。確かに不妊・去勢手術のために捕獲をしたならそのまま保護すればいいのでは?と考える方がいるでしょう。
保護した動物が全て、里親と出会えることが理想ですが、現実的ではありません。元々いた地域に戻す理由を解説します。
施設・人員・費用不足
まず、保護したネコ全てを保護できる施設・お世話できる人員・費用などを確保できません。
保護動物の管理を担っているのが、国の機関である保健所・動物愛護センターです。保健所で一定期間保護され、期間を過ぎると動物愛護センターへ移されます。保護収容の場合は、だいたい1週間程度の収容期間を設けられており、動物愛護センターは殺処分可能な施設です。
殺処分することは、保健所・動物愛護センターの収容スペース・人員・費用が足りないことが理由の1つです。なので民間のボランティア団体や個人で保護活動している方が存在します。ですが、いくら保護活動を頑張ってもネコが増え続ければ殺処分は免れません。
全てのネコを保護することは、新しく保護するべき優先順位が高いネコを保護できなくなってしまうという懸念点があります。
ですが、不妊去勢の手術を受けたあと、元々いた地域に戻した方がリスクがあるネコはそのまま保護される場合もあります。
野良猫の流入を防げる
ネコは縄張り意識がある生き物です。自分だけの領域をつくるので他のネコが侵入することを拒みます。縄張りの範囲はオス猫で半径約100メートル、メス猫は半径約50メートルといわれています。
では、縄張りをつくっていたネコがいなくなったらどうなるでしょうか?元々いたネコがいなくなった地域に、他の地域から野良猫がやってきます。
ネコは繁殖能力が非常に高く、生後半年から子供を産むことができます。年2〜3回、1回に4〜5匹出産するといわれています。ねずみ算式で1匹のメス猫から始まり、1年後には50〜70匹に増える可能性があります。
そのため、不妊去勢手術を受けていないネコが他の地域からやってくると、ネコが増加する可能性があります。野良猫の数を減らすために不妊去勢手術を行っているのに、ネコが増加してしまったら意味がありません。
ほかの地域から流入する野良猫を防ぐためにも、元々いた地域に戻しています。
TNRは意味がない?
TNR活動には、効果がある・ない両方の意見が存在しますが、どうしてでしょうか?
地域猫活動は野良猫を減らす効果があるという報告がいくつか存在します。ですが、地域猫の数の減少により地域猫活動の終了の報告は見受けられません。
実際に、TNR活動により野良猫の数を減らすには、地域のネコのうち約50%程度の不妊去勢済み率が必要とされており、効果を発揮するためには10〜15年必要との報告があります。
つまり地域猫活動終了の報告がないのは、現在も活動継続中の団体・地域が多く、効果が発揮するには時間がかかるという意味でしょう。
反対に地域猫活動の効果に悪影響を及ぼすことがいくつか報告されています。活動の効果に影響している具体例を紹介します。
- 地域住民の理解が得られない
- 活動を一緒に行うメンバー同士の活動に対する目的の解釈の違い・誤解
- 飼育放棄・遺棄によるネコの個体数増加
地域猫活動はネコの問題だけではなく、人間関係も大きく影響しているようです。
このことから地域猫活動にはさまざまな関係が重要で、効果が出るまで長期間かかるので、結果として“TNR活動は意味がない”という意見が存在しているのでしょう。
ネコが嫌いな人への配慮が重要
保護猫活動やTNR活動と聞くと、ネコ思い・ネコ好きな人たちだけで協力する印象は少なからずあるでしょう。ですが、地域住民の協力なくて活動は成り立ちません。地域住民の中にはネコが嫌いな人も存在しています。
ネコが嫌いな人たちを活動から排除するのではなく、自分たちの活動の意味をわかってもらったりネコが嫌いな人たちの立場を尊重しましょう。
TNR活動に関して誤解をしていたり、理解が得られなければ地域住民の協力は得られません。ネコが好き・嫌い・無関心な人たちが混在している地域で、意見交換をしてその地域に合わせた活動を行っていくことが重要です。
まとめ
TNRは野良猫を減らす意味のある活動です。ですが、マンパワーで成り立つものではなく、地域住民や協力してくれる方々がいることで効果が現れます。
それぞれの立場を考え、お互いが過ごしやすい環境をつくるためにTNRは必要です。まだ活動に関する誤解や理解が得られない現状がありますが、少しずつ歩み寄りながら悲しい未来を減らしていきましょう。
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